スマートリーガル法律事務所

沖縄の賃貸物件で無断転貸・無断民泊が発覚したら?契約解除の要件と明渡し請求の進め方を弁護士が解説

2026年10月20日

はじめに:賃貸物件の無断転貸・無断民泊をめぐる法律問題

沖縄県では、観光客向けの宿泊施設としてマンションや一戸建てなどが利用されています。その一方で、居住用として賃貸した物件が、貸主の承諾なく第三者に転貸されたり、民泊施設として使用されたりした場合には、賃貸借契約上の問題が生じることがあります。

例えば、次のようなケースが考えられます。

  • 居住用として貸したマンションが、貸主の承諾なく民泊施設として使用されていた。
  • 借主が自ら居住せず、第三者に部屋を又貸ししていた。
  • 賃貸借契約で禁止されているにもかかわらず、宿泊予約サイトを通じて短期宿泊者を募集していた。
  • 借主以外の第三者による物件の使用が判明したものの、契約解除や明渡しを求められるか判断できない。

このような場合、貸主としては、契約を解除して物件の明渡しを求めることができるのかが重要な問題となります。

もっとも、無断転貸が判明したからといって、必ずしも賃貸借契約を解除できるわけではありません。

契約解除の可否は、民法の規定に加え、貸主と借主との信頼関係が破壊されたと評価できるかという観点から判断されます。

本記事では、沖縄県内の不動産オーナー様や賃貸管理会社様に向けて、無断転貸・無断民泊に関する法律上の基本ルール、契約解除の判断基準、明渡し請求の手続き、損害賠償請求などについて解説します。

1 無断転貸は契約解除の理由になる?民法612条の基本ルール

(1)貸主の承諾のない転貸は原則として認められない

民法612条1項は、賃借人が賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲渡し、又は賃借物を転貸することができないと定めています。

また、同条2項は、賃借人がこれに違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人が契約を解除できる旨を規定しています。

したがって、借主が貸主の承諾を得ずに物件を第三者へ転貸した場合、原則として賃貸借契約の解除原因となります。

また、賃貸借契約書において「第三者への転貸を禁止する」「居住目的以外での使用を禁止する」といった条項が設けられている場合には、その契約条項との関係も問題になります。

ただし、第三者が物件を使用しているという事実だけで、直ちに法律上の転貸に該当するとは限りません。

例えば、借主の家族や知人が一時的に滞在している場合と、借主が第三者に独立して物件を使用収益させている場合とでは、法律上の評価が異なる可能性があります。

そのため、まずは第三者による物件の使用状況や、借主との関係などを確認する必要があります。

(2)重要な判断基準となる「信頼関係破壊の法理」

民法612条2項には無断転貸を理由とする解除が規定されていますが、裁判実務では、無断転貸の事実があるだけで当然に解除が認められるわけではありません。

最高裁判例上、無断転貸について、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、賃貸人は民法612条2項による契約解除をすることができないとされています。

これは、賃貸借契約が当事者間の継続的な信頼関係を基礎とする契約であることを踏まえた考え方です。

したがって、無断転貸が認められる場合でも、その具体的な経緯や態様などを検討し、背信行為と認めるに足りない特段の事情があるかどうかを判断する必要があります。

例えば、次のような事情が判断に影響する可能性があります。

  • 第三者に物件を使用させることになった経緯
  • 第三者による使用の期間や態様
  • 借主が引き続き物件を使用しているかどうか
  • 転貸が営利目的で行われているかどうか
  • 貸主が転貸の事実を認識し、どのような対応をしていたか
  • 建物の使用状況や管理への影響
  • 賃貸借契約の内容や当事者間のこれまでの経緯

これらの事情を総合的に検討した結果、背信行為と認めるに足りない特段の事情があると判断されれば、無断転貸を理由とする解除は認められません。

反対に、そのような特段の事情が認められなければ、民法612条2項に基づく解除が認められることになります。

(3)無断民泊の場合はどのように判断される?

居住用として賃貸されたマンションやアパートを、借主が貸主に無断で民泊施設として使用した場合にも、契約解除が問題となります。

ただし、民泊として使用されたという事実だけで、常に重大な背信行為に該当すると断定することはできません。

具体的には、次のような事情が重要になります。

① 民泊としての利用態様

借主が一時的に第三者を宿泊させたにとどまるのか、それとも第三者に独立して物件を使用させていたのかによって、法律上の評価が異なります。

② 利用の反復継続性

一時的な利用なのか、宿泊者を継続的に募集して反復して使用させていたのかは、重要な判断要素となります。

③ 営利性

借主が宿泊料金を受領していたか、継続的な収益を目的としていたかなども、転貸の実態や背信性を判断する事情となり得ます。

④ 建物の使用状況

不特定多数の宿泊者が出入りしていたか、建物の使用方法に変更があったか、共用部分の利用や建物管理にどのような影響が生じていたかなども検討対象となります。

⑤ 賃貸借契約の内容

居住用に用途が限定されているか、民泊営業や転貸について明確な禁止条項が設けられているかなども重要です。

このように、無断民泊を理由とする契約解除の可否についても、利用態様、反復継続性、営利性、建物の使用状況、契約内容などの個別事情を踏まえた判断が必要となります。

なお、民泊営業については、賃貸借契約上の問題とは別に、住宅宿泊事業法や旅館業法などの規制が問題となる場合もあります。

民泊営業に必要な届出や許可を得ているかという問題と、貸主との賃貸借契約上、民泊利用が認められるかという問題は、区別して検討する必要があります。

2 無断転貸・無断民泊が発覚した場合に貸主が確認すべきこと

無断転貸や無断民泊の疑いが生じた場合、貸主としては、直ちに契約解除や明渡しを求める前に、契約内容と実際の使用状況を確認することが重要です。

(1)賃貸借契約書の内容を確認する

まず確認すべきなのは、賃貸借契約書にどのような定めがあるかという点です。

特に、次の事項が問題となります。

  • 賃貸物件の使用目的
  • 転貸や賃借権譲渡に関する禁止条項
  • 第三者の使用に関する承諾条項
  • 契約違反があった場合の解除条項
  • 原状回復や損害賠償に関する条項
  • 違約金に関する条項

例えば、契約上、居住目的での使用が定められている場合には、宿泊施設としての営業が用法遵守義務に違反するかが問題となります。

また、契約書に無断転貸禁止条項がある場合でも、実際に解除できるかについては、前述した信頼関係破壊の法理を踏まえた検討が必要です。

(2)第三者による使用状況を確認する

次に、実際に誰が、どのような形で物件を使用しているのかを確認します。

例えば、宿泊予約サイトに物件が掲載されている場合には、その掲載内容が物件の使用状況を判断する資料となる可能性があります。

また、借主と第三者との関係、第三者による使用期間、借主自身の居住実態なども重要です。

ただし、証拠収集に当たっては、借主や第三者の権利を不当に侵害しないよう注意が必要です。

貸主が物件の所有者であるという理由だけで、借主の承諾なく室内へ立ち入ったり、室内の物品を調査したりできるわけではありません。

証拠収集の具体的な方法については、物件の状況や契約内容を踏まえ、適法性を確認しながら進める必要があります。

(3)借主への事実確認と是正の検討

無断転貸や無断民泊が疑われる場合には、借主に対して事実関係の説明を求めることも考えられます。

その結果、契約違反が確認された場合には、違反状態の解消を求める方法や、契約解除を検討する方法があります。

もっとも、すべての事案で事前の是正催告が必要になるわけではなく、反対に、直ちに解除通知を送付すれば解除が有効になるわけでもありません。

催告の要否や解除の可否は、違反の内容、継続状況、契約条項、信頼関係に関する事情などを踏まえて判断する必要があります。

通知を書面で行う場合には、通知内容や到達の事実を後日確認できる方法を選択することが考えられます。

内容証明郵便や配達証明は、そのための手段の一つですが、あらゆる事案で必須となるものではありません。

3 無断転貸を理由に賃貸借契約を解除する場合の注意点

(1)解除の意思表示とその効力

無断転貸を理由として契約解除を行う場合には、借主に対して解除の意思表示を行う必要があります。

ただし、解除通知を送付したという事実だけで、必ずしも契約解除の効力が認められるわけではありません。

無断転貸の事実があるか、背信行為と認めるに足りない特段の事情があるかなどについて争いが生じた場合には、最終的に裁判所の判断を要することがあります。

そのため、解除通知を送付する段階から、解除原因となる事実や法律上の根拠を整理しておくことが重要です。

(2)貸主が独自に明渡しを実現することは避ける

借主が契約に違反している場合でも、貸主が自ら強制的に物件の明渡しを実現することには法的な問題が生じ得ます。

例えば、借主の承諾なく鍵を交換したり、室内の荷物を搬出・処分したりする行為については、自力救済の禁止との関係が問題となります。

このような行為の適法性は具体的な状況によって判断されますが、貸主が独自の判断で実力行使を行うことは避けるべきです。

借主が任意に明け渡さない場合には、必要に応じて訴訟や強制執行などの法的手続きを検討することになります。

4 無断転貸・無断民泊を解消するための明渡し請求の手続き

無断転貸を理由とする契約解除が有効である場合、貸主は借主に対して物件の明渡しを求めることができます。

具体的な手続きは、借主が任意に明渡しに応じるかどうかによって異なります。

(1)任意交渉による明渡し

借主が話し合いに応じる場合には、任意交渉によって明渡しの条件を取り決める方法があります。

例えば、明渡しの期限、残置物の取扱い、原状回復、未払賃料などについて協議することが考えられます。

合意が成立した場合には、後日の紛争を防ぐため、合意内容を書面に残しておくことが重要です。

もっとも、合意書を作成しただけで、借主が退去しなかった場合に直ちに強制執行できるとは限りません。

強制執行には、原則として法律上必要な債務名義を取得する必要があります。

(2)建物明渡請求訴訟

借主が任意の明渡しに応じない場合には、建物明渡請求訴訟を提起することが考えられます。

訴訟では、主に次の事項が問題となります。

  • 賃貸借契約の存在及び内容
  • 第三者による物件の使用状況
  • 無断転貸に該当する事実の有無
  • 背信行為と認めるに足りない特段の事情の有無
  • 契約解除の意思表示及びその効力
  • 現在の占有状況

裁判所が契約解除を有効と判断し、明渡請求を認めた場合には、借主に対して建物の明渡しを命じる判決が言い渡されます。

もっとも、借主以外の第三者が物件を占有している場合には、その第三者に対する請求の要否なども検討する必要があります。

(3)占有移転禁止の仮処分とは

建物明渡請求訴訟を提起する場合、訴訟中に物件の占有者が変更されることが問題となる場合があります。

例えば、借主に対して明渡しを求めている間に、別の第三者が物件の占有を開始した場合、判決の効力や強制執行の対象について問題が生じる可能性があります。

このような事態に備えるための保全手続きが、占有移転禁止の仮処分です。

占有移転禁止の仮処分は、物件の占有状態を保全し、後に取得する明渡判決の執行を確保することを目的とする手続きです。

ただし、仮処分が必要かどうか、また認められるかどうかは、占有状況や保全の必要性などに応じて判断されます。

なお、占有移転禁止の仮処分は、それ自体によって建物を明け渡させる手続きではありません。

(4)建物処分禁止の仮処分との違い

占有移転禁止の仮処分と混同されやすい手続きとして、建物処分禁止の仮処分があります。

両者は、保全しようとする権利や目的が異なります。

占有移転禁止の仮処分は、建物明渡請求権などの実現を確保するため、占有の移転を禁止することを目的とします。

これに対して、建物処分禁止の仮処分は、建物の所有権移転登記請求権など、登記に関係する権利の実現を保全する場面で問題となる手続きです。

したがって、賃借人による無断転貸が問題となり、貸主が建物の明渡しを求める事案では、一般に占有移転禁止の仮処分の要否が検討対象となります。

建物処分禁止の仮処分とは、目的や適用場面を区別して考える必要があります。

(5)明渡しの催告と強制執行

建物明渡しを命じる判決などの債務名義を取得しても、借主が任意に退去しない場合には、強制執行を検討することになります。

建物明渡しの強制執行は、裁判所の執行官によって実施されます。

この手続きでは、通常、まず執行官が現地で明渡しの催告を行い、明渡しの期限を定めます。

明渡しの催告は、貸主が契約解除前に行う是正の催告とは異なり、建物明渡しの強制執行手続きの中で行われるものです。

催告後も借主が任意に明け渡さない場合には、法律上の手続きに従い、明渡しの断行が実施されることがあります。

このように、建物の明渡しを実現するまでには、契約解除、明渡請求訴訟、必要に応じた保全処分、強制執行という複数の段階があります。

それぞれの手続きは目的や要件が異なるため、事案に応じて適切な方法を選択する必要があります。

5 無断転貸・無断民泊による損害賠償や金銭請求は認められる?

無断転貸や無断民泊が発覚した場合、貸主としては、建物の明渡しだけでなく、金銭的な請求を検討することもあります。

もっとも、無断転貸があったという理由だけで、借主が得た利益や貸主の主張する損害のすべてを当然に請求できるわけではありません。

請求の法的根拠、契約内容、損害の発生及び金額などを個別に検討する必要があります。

(1)賃料相当損害金

賃貸借契約が有効に終了した後も、借主が建物の占有を継続している場合には、賃料相当損害金の請求が問題となります。

ただし、請求が認められるかどうかや、その金額については、契約終了の効力、占有の状況、損害の有無、契約条項などを踏まえて判断する必要があります。

(2)不当利得返還請求

借主が無断民泊によって宿泊料金などの収益を得ていた場合には、不当利得返還請求が問題となることがあります。

しかし、借主が無断転貸や民泊営業によって利益を得たからといって、その利益全額を当然に貸主へ返還する義務が生じるわけではありません。

民法703条に基づく不当利得返還請求が認められるためには、法律上の原因のない利益の取得、貸主側の損失、両者の関係など、法定の要件を満たす必要があります。

そのため、宿泊料金の総額をそのまま返還請求できると考えることは適切ではありません。

(3)損害賠償請求

無断転貸や無断民泊によって貸主に損害が生じた場合には、債務不履行などを理由とする損害賠償請求が問題となることがあります。

例えば、契約違反に伴って建物や設備に損傷が生じた場合などが考えられます。

もっとも、損害賠償が認められるためには、債務不履行の有無、損害の発生、因果関係、損害額などについて検討する必要があります。

また、契約書に違約金条項がある場合には、その条項の内容や効力についても確認が必要です。

(4)原状回復費用

民泊利用などによって室内に汚損や破損が生じた場合には、原状回復費用の負担が問題となります。

ただし、借主が負担すべき原状回復の範囲は、契約内容や民法621条などを踏まえて判断する必要があります。

通常の使用及び収益によって生じた損耗や経年変化については、原則として借主の原状回復義務の対象から除かれます。

したがって、民泊として使用されていたという理由だけで、貸主が希望する修繕費用の全額を当然に請求できるわけではありません。

具体的な損傷の内容や原因、契約条項などを確認することが重要です。

6 無断転貸・無断民泊に関するよくある質問

Q1 借主が勝手に民泊を始めた場合、すぐに契約解除できますか?

無断民泊が判明しただけで、必ず解除できるとは限りません。

第三者への使用の態様、反復継続性、営利性、建物の使用状況、契約内容などを踏まえ、無断転貸に該当するか、また背信行為と認めるに足りない特段の事情があるかを検討する必要があります。

Q2 契約書に「転貸禁止」と書かれていれば、必ず退去させられますか?

転貸禁止条項があることは重要ですが、それだけで必ず解除や明渡しが認められるわけではありません。

無断転貸を理由とする解除については、信頼関係破壊の法理を踏まえた判断が必要となります。

Q3 借主が民泊で得た宿泊料金をすべて請求できますか?

当然に全額を請求できるわけではありません。

不当利得返還請求や損害賠償請求の可能性はありますが、それぞれの請求について法律上の要件を満たす必要があります。

Q4 借主が退去しない場合、貸主が鍵を交換してもよいですか?

借主が契約違反をしている場合でも、貸主が独自に鍵を交換して占有を排除する行為には、自力救済の禁止との関係で法的な問題が生じ得ます。

任意の明渡しが実現しない場合には、訴訟や強制執行などの法的手続きを検討することが適切です。

Q5 民泊の宿泊者が入れ替わっている場合、どのような手続きが考えられますか?

第三者による占有の状況によっては、占有移転禁止の仮処分を検討することがあります。

ただし、宿泊者の出入りがあるというだけで当然に仮処分が認められるわけではありません。

実際の占有者が誰であるか、占有移転のおそれがあるかなどを確認する必要があります。

まとめ:無断転貸・無断民泊の問題は契約内容と具体的事情の確認が重要

賃貸物件の無断転貸や無断民泊が判明した場合、貸主としては、契約解除や建物の明渡し、損害賠償などを検討することになります。

しかし、無断転貸の事実があるからといって、すべてのケースで契約解除が認められるわけではありません。

民法612条2項による解除については、背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には解除できないという判例法理に注意する必要があります。

また、建物明渡しの実現に向けては、任意交渉、訴訟、占有移転禁止の仮処分、強制執行など、それぞれ目的の異なる手続きを適切に選択することが重要です。

さらに、不当利得返還請求、損害賠償請求、原状回復費用、賃料相当損害金などの金銭請求についても、請求の根拠や要件を個別に検討する必要があります。

沖縄の無断転貸・無断民泊トラブルはスマートリーガル法律事務所へ

スマートリーガル法律事務所では、沖縄県内の不動産に関する法律問題についてご相談をお受けしています。

「賃貸物件が無断で民泊として使用されている」「借主が第三者に物件を又貸ししている」「契約解除や明渡しを求めたいが、法的に可能なのか分からない」といった場合には、契約書や具体的な使用状況を確認したうえで、法的な対応を検討することが重要です。

また、借主側の方で、無断転貸を理由として契約解除や明渡しを求められている場合にも、解除の効力や請求内容について検討すべき法律問題があります。

無断転貸・無断民泊、建物明渡しなどの不動産トラブルでお困りの方は、スマートリーガル法律事務所までお気軽にご相談ください。

お悩みの内容に合わせて、弁護士が解決への道筋をご提案します。

まずは弁護士に、状況をお聞かせください

LINEで相談予約する

LINEは24時間受付。ご相談のご予約もこちらから承ります

電話する月〜金 9:00〜18:00LINEで相談予約24時間受付