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【沖縄の賃貸トラブル】エアコン・給湯器などの設備が故障したら誰が修理する?大家さんの修繕義務と家賃減額を弁護士が解説

2026年10月20日

はじめに:沖縄の賃貸トラブルで多い「設備の故障」と「修繕」の悩み

沖縄県内には、単身者向けのアパートからファミリー向けのマンション、戸建て賃貸まで、多様な賃貸物件が存在します。

沖縄は高温多湿な気候に加え、強い日差し、潮風による塩害、台風など、建物や住宅設備の維持管理において注意を要する環境にあります。

こうした環境の中、賃貸住宅では「エアコンが突然冷えなくなった」「台風の際に窓の隙間から雨水が入り込んだ」「給湯器が故障してお湯が出なくなった」といったトラブルが発生することがあります。

設備に不具合が生じた場合、借主(賃借人)からは「大家さんに修理してほしい」「設備が使えない期間は家賃を減額してほしい」といった要望が出されます。

一方、大家さん(賃貸人)からは「借主の使い方に問題があったのではないか」「修理費用は契約上、借主の負担ではないか」といった主張がなされ、費用負担や修繕の時期をめぐって紛争に発展することがあります。

こうした問題を解決するためには、民法が定める修繕義務や賃料減額の要件を正確に理解することが重要です。

本記事では、沖縄県内の賃貸住宅における設備故障を念頭に、大家さんの修繕義務、借主による修繕、修繕費用の償還請求、設備故障時の家賃減額について、民法の規定に沿って解説します。

賃貸物件の設備が壊れたら誰が直す?大家さんの「修繕義務」の基本ルール

原則として大家さん(賃貸人)に修繕義務がある

民法606条1項本文は、次のように定めています。

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

つまり、大家さんは、借主が賃貸物件を契約で予定された用途に従って使用できるよう、必要な修繕を行う義務を負うのが原則です。

例えば、賃貸借契約の対象に含まれる次のような設備が故障した場合には、大家さんに修繕義務が生じる可能性があります。

  • 備え付けのエアコンが故障して使用できなくなった場合
  • 給湯器が故障してお湯が出なくなった場合
  • トイレや排水設備が故障して通常の使用ができなくなった場合
  • 屋根や外壁などの不具合によって雨漏りが発生した場合
  • 給排水管の不具合によって漏水が発生した場合

もっとも、設備に不具合が生じたからといって、必ず大家さんに修繕義務が発生するわけではありません。

修繕義務の有無は、設備が賃貸借契約の対象に含まれているか、修繕が物件の使用・収益に必要か、故障原因は何か、契約書にどのような定めがあるかなどを踏まえて判断する必要があります。

例えば、前の入居者が残したエアコンなどの残置物については、契約上の位置づけによって修繕義務の判断が異なる可能性があります。

借主の責任で故障した場合は例外となる

民法606条1項ただし書は、次のように定めています。

ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

したがって、借主の故意や過失など、借主の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になった場合、大家さんは同条に基づく修繕義務を負いません。

例えば、借主が物をぶつけて洗面台を破損させた場合や、不適切な使用によって設備を故障させた場合には、借主の責任が問題となります。

ただし、設備が故障したという事実だけで、借主の過失が認められるわけではありません。

例えば、エアコンのフィルター清掃が不十分だったとしても、それだけで故障原因が借主の管理不足にあると断定することはできません。

設備の使用年数、故障箇所、メーカーが推奨する管理方法、故障と管理状況との因果関係などを確認する必要があります。

また、借主に修繕費用の負担義務が生じるかどうかについても、契約内容や債務不履行の有無などを踏まえた個別の判断が必要です。

沖縄特有の塩害や台風による故障は誰の負担?

沖縄では、海に近い建物の金属部分や室外機に腐食が生じたり、台風によって窓や屋根などが損傷したりすることがあります。

しかし、沖縄の気候や自然環境による故障だからといって、法律上、修繕費用の負担者が一律に決まるわけではありません。

例えば、塩害による経年劣化が原因で備え付けのエアコンが故障し、その修繕が賃貸物件の使用に必要である場合、原則として民法606条1項本文に基づく大家さんの修繕義務が問題となります。

一方、台風による設備の破損についても、破損の原因、借主による管理状況、契約内容などによって判断が異なります。

自然災害による故障については、借主に責任があるかどうかだけでなく、修繕の必要性や修繕に関する契約上の取り決めも確認することが重要です。

契約書に「修繕費用は借主負担」と書かれていたら?

小修繕について借主負担とする特約

賃貸借契約書には、電球の交換や消耗品の取り替えなど、比較的軽微な修繕を借主の負担とする条項が設けられていることがあります。

民法606条の修繕義務に関する規定は、当事者間の特約によって一定の変更が認められる性質の規定と解されています。

そのため、修繕の対象や費用負担について、契約書に特約がある場合には、その内容を確認する必要があります。

例えば、電球などの消耗品の交換を借主負担とする特約については、契約内容や負担の程度などに照らして有効と判断されることがあります。

修繕特約があれば、すべて借主負担になるわけではない

一方で、契約書に「修繕費用はすべて借主負担」と記載されている場合でも、その条項が当然にすべての場面で有効になるとは限りません。

特約の有効性や適用範囲については、次のような事情を踏まえて個別に判断する必要があります。

  • 特約の文言が明確であるか
  • 借主が負担する修繕の範囲が具体的に定められているか
  • 修繕費用の負担がどの程度になるか
  • 契約締結時の説明や合意の状況
  • 消費者契約法などの強行法規に抵触しないか

例えば、借主が消費者、大家さんが事業者に該当する賃貸借契約では、消費者契約法10条によって、一定の要件の下で消費者の利益を一方的に害する条項が無効となる可能性があります。

ただし、エアコンや給湯器などの修繕費用を借主負担とする特約が、設備の種類だけを理由として直ちに無効になるわけではありません。

修繕特約の有効性は、契約内容と具体的な事情を踏まえて判断する必要があります。

大家さんが修繕してくれない!借主自身で修理できるケース

設備が故障したため大家さんや管理会社に連絡したものの、修繕が行われない場合があります。

このような場合、借主が自ら修理業者を手配することはできるのでしょうか。

民法607条の2が定める2つのケース

民法607条の2は、賃借人による修繕について、次のいずれかに該当する場合には借主が修繕できると定めています。

① 大家さんに通知したのに、相当の期間内に修繕されない場合

借主が大家さんに修繕の必要性を通知した場合、または大家さんが修繕の必要性を知っていた場合で、大家さんが相当の期間内に必要な修繕をしないときです。

ここでいう「相当の期間」がどの程度かについて、法律上、一律の日数は定められていません。

故障の内容、生活への影響、修繕の緊急性、業者の手配に必要な時間などを踏まえて判断されます。

例えば、エアコンの故障についても、真夏の高温時に唯一の冷房設備が使用できない場合と、比較的涼しい時期に複数あるエアコンのうち1台が故障した場合とでは、修繕の緊急性が異なる可能性があります。

したがって、「通知から3日経過すれば必ず借主が修理できる」といった一律の基準があるわけではありません。

② 急迫の事情がある場合

民法607条の2は、急迫の事情がある場合にも、借主による修繕を認めています。

例えば、水道管の破損によって大量の水が流出し続けている場合など、直ちに対応しなければ被害が拡大するおそれがあるケースでは、急迫の事情が認められる可能性があります。

もっとも、緊急性があると判断できるかどうかは、具体的な状況によります。

急迫の事情がある場合には、事前の通知や相当期間の経過を待たずに修繕できることがありますが、可能であれば大家さんや管理会社への連絡も併せて行うことが望ましいでしょう。

借主が立て替えた修繕費用は請求できる?

民法608条1項は、次のように定めています。

賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

つまり、借主が支出した費用が「賃貸人の負担に属する必要費」に該当する場合には、大家さんに対して償還を請求できます。

ただし、借主が修理代金を支払ったからといって、その全額を当然に請求できるわけではありません。

必要費償還請求が認められるかどうかは、修繕の必要性、費用負担の帰属、支出額の合理性などを踏まえて判断されます。

例えば、修理によって十分に使用できる設備を、借主の判断だけで高額な最新機種に交換した場合、その費用の全額が必要費として認められるとは限りません。

また、借主の責めに帰すべき事由によって故障が生じた場合や、有効な特約によって借主が費用を負担すべき場合には、必要費償還請求が認められない可能性があります。

なお、民法607条の2に基づいて借主が修繕できるかという問題と、民法608条に基づいて修繕費用の償還を請求できるかという問題は、区別して検討する必要があります。

修繕費用のトラブルを防ぐために

借主が修繕を検討する場合には、次のような対応が重要です。

  • 故障の状況を写真や動画で記録する
  • 大家さんや管理会社に故障内容を速やかに通知する
  • 通知日時や回答内容をメール・メッセージなどで保存する
  • 修理業者の見積書や作業報告書を取得する
  • 修繕の範囲や費用について、可能な限り事前に協議する
  • 緊急修繕の場合には、緊急性を裏付ける事情を記録する

特に、設備の全面交換や高額な工事を予定している場合には、事前に大家さんとの協議を行うことが紛争防止につながります。

設備が使えない期間は家賃が下がる?民法611条の「当然減額」

賃料減額の要件とは?

民法611条1項は、次のように定めています。

賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

この規定による賃料減額が認められるためには、主に次の要件を満たす必要があります。

  1. 賃借物の一部について、滅失その他の事由により使用・収益ができなくなったこと
  2. 使用・収益ができなくなったことが、借主の責めに帰することができない事由によること

これらの要件を満たす場合には、使用・収益ができなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されます。

2020年4月施行の改正民法では、従来の「賃料の減額を請求することができる」という規定から、「賃料は……減額される」という規定に変更されました。

そのため、現行民法611条1項が適用される場合には、借主による減額請求の意思表示がなくても、法律上、賃料が減額される仕組みとなっています。

もっとも、すべての設備故障について、当然に賃料減額が認められるわけではありません。

例えば、エアコンが故障した場合でも、そのエアコンが賃貸借契約の対象となる設備なのか、故障によって賃借物の使用・収益がどの程度妨げられているのかなどを検討する必要があります。

エアコン・給湯器・トイレの故障では家賃はいくら減額される?

民法611条は、使用・収益ができなくなった部分の割合に応じた賃料減額を定めていますが、設備の種類ごとに具体的な減額率を定めているわけではありません。

そのため、エアコンが故障したら必ず家賃の何%を減額する、トイレが使えなければ必ず何%を減額するといった、法律上の一律の基準は存在しません。

実務上は、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が公表する「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」などが、賃料減額について協議する際の参考資料となることがあります。

ただし、同ガイドラインに示される減額割合や免責日数は、民法611条によって一律に適用される法定基準ではありません。

また、ガイドライン上の数値を個別の事案に適用できるかどうかについても、契約内容や設備の状況、使用できなかった期間、生活への影響などを踏まえて判断する必要があります。

例えば、同じエアコンの故障でも、沖縄の真夏に冷房設備が使用できなくなった場合と、比較的涼しい季節に使用できなくなった場合とでは、賃貸物件の使用・収益に与える影響が異なる可能性があります。

ただし、季節や地域の違いによって具体的な減額率が自動的に決まるわけではありません。

賃料減額の金額は、法律上の要件を満たすかを確認した上で、個別の事情に応じて検討する必要があります。

「免責期間」が経過しないと家賃は減額されない?

賃料減額に関するガイドラインでは、設備の修繕に通常必要となる期間などを考慮して、一定の免責日数が示されていることがあります。

しかし、民法611条には、賃料減額について一律の免責期間を設ける規定はありません。

したがって、ガイドラインに免責日数が示されているからといって、その日数が経過するまでは法律上当然に賃料減額が認められない、というわけではありません。

ガイドライン上の免責日数は、当事者間で賃料減額について協議する際の参考となるものであり、民法611条の適用要件そのものではありません。

また、賃貸借契約に賃料減額の対象期間や算定方法に関する特約がある場合には、その内容や有効性についても検討する必要があります。

家賃減額はいつから始まる?通知日と起算点の違い

設備が故障した場合、借主は大家さんや管理会社に速やかに連絡することが重要です。

民法615条は、賃借物が修繕を要する場合などについて、一定の場合に借主が賃貸人へ通知する義務を定めています。

しかし、故障を通知した日が、当然に賃料減額の起算点となるわけではありません。

民法611条1項に基づく賃料減額は、賃借物の一部が借主の責めに帰することができない事由によって使用・収益できなくなったことを要件としています。

そのため、賃料減額の対象となる期間については、実際に使用・収益ができなくなった時期や、その状態が継続した期間を検討する必要があります。

例えば、10月1日に設備が故障して使用できなくなり、借主が10月3日に管理会社へ通知した場合、減額の起算点が当然に10月3日となるわけではありません。

10月1日から使用・収益できない状態にあったことが認められ、民法611条の要件を満たすのであれば、通知前の期間も減額の対象となる可能性があります。

もっとも、通知が遅れたことによって修繕が遅延した場合などには、借主の通知義務違反や損害拡大との関係が別途問題となる可能性があります。

したがって、賃料減額の起算点と通知義務の問題は区別して考える必要があります。

勝手に家賃の支払いを止めてもよい?賃料減額をめぐる注意点

「当然減額」でも減額幅について争いになることがある

民法611条の要件を満たす場合、賃料は法律上当然に減額されます。

しかし、実際にいくら減額されるかについては、大家さんと借主の間で意見が分かれることがあります。

例えば、借主が家賃の30%を減額すべきと考えていても、大家さんが10%の減額しか認めないという場合です。

このような場合、借主が独自に算定した金額だけを支払うと、減額が認められない部分について賃料の未払いが生じるおそれがあります。

賃料の未払いが継続した場合には、滞納額や期間、当事者間の信頼関係などによって、契約解除をめぐる紛争に発展する可能性があります。

したがって、賃料減額の金額について争いがある場合には、減額の法的根拠や算定方法を整理し、大家さんと協議することが望ましいでしょう。

修繕費用を家賃から差し引く場合にも注意が必要

借主が修繕費用を立て替えた場合、大家さんに対する必要費償還請求権が成立することがあります。

しかし、その費用を翌月の家賃から差し引いてよいかどうかは、別途検討が必要です。

民法上の相殺が認められるためには、原則として、互いに同種の債権を有し、相殺に必要な要件を満たすことが必要です。

また、必要費償還請求権の成立や金額について争いがある場合には、一方的な相殺によって新たな紛争が生じる可能性があります。

そのため、修繕費用と賃料を相殺する場合には、請求権の有無や金額を確認し、可能な限り事前に大家さんとの合意を得ることが望ましいでしょう。

沖縄の賃貸住宅で設備が故障した場合の対応方法

設備故障をめぐるトラブルを防ぐためには、借主と大家さんの双方が、故障原因や修繕の必要性を客観的に確認することが重要です。

借主が取るべき対応

設備が故障した場合、借主は、まず故障の状況を確認し、写真や動画などで記録しておくことが望ましいでしょう。

その上で、大家さんや管理会社に速やかに通知し、修繕を求めます。

修繕が行われない場合には、民法607条の2に基づいて自ら修繕できる状況にあるかを確認する必要があります。

また、設備が使用できないことで生活に支障が生じている場合には、民法611条に基づく賃料減額の要件を満たすかについて検討することが考えられます。

大家さんが取るべき対応

大家さんは、設備の故障について連絡を受けた場合、故障原因や修繕の必要性を確認し、民法606条に基づく修繕義務の有無を検討する必要があります。

借主の責任による故障が疑われる場合でも、十分な確認をせずに修繕を拒否すると、紛争が拡大する可能性があります。

また、修繕に時間がかかる場合には、その理由や対応予定を借主に説明し、必要に応じて代替措置や賃料減額について協議することが望ましいでしょう。

特に沖縄では、台風の接近時や通過後に修繕業者の手配が難しくなることも考えられます。

もっとも、修繕業者の手配が困難であることだけを理由として、大家さんの修繕義務や民法611条による賃料減額が当然に否定されるわけではありません。

まとめ:修繕義務・必要費償還・家賃減額はそれぞれ要件が異なる

賃貸住宅の設備が故障した場合には、民法上、主に次の4つの制度が問題となります。

① 大家さんの修繕義務(民法606条)

大家さんは、原則として賃貸物件の使用・収益に必要な修繕を行う義務を負います。ただし、借主の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合には、同条に基づく修繕義務を負いません。修繕特約がある場合には、その内容や有効性を個別に検討する必要があります。

② 借主による修繕(民法607条の2)

大家さんが修繕の必要性を知りながら相当の期間内に必要な修繕をしない場合や、急迫の事情がある場合には、借主が自ら修繕できることがあります。

③ 必要費償還請求(民法608条)

借主が賃貸人の負担に属する必要費を支出した場合には、大家さんに対して直ちに償還を請求できます。ただし、支出した修繕費用の全額が当然に認められるわけではありません。

④ 賃料の当然減額(民法611条)

借主の責めに帰することができない事由によって賃借物の一部が使用・収益できなくなった場合には、その部分の割合に応じて賃料が減額されます。ただし、減額率や免責期間について法律上の一律の数値基準があるわけではありません。

設備故障に関するトラブルでは、修繕の必要性、故障原因、契約内容、通知の状況、生活への影響など、さまざまな事情が問題となります。

大家さんと借主の双方が、法律上の権利義務を正確に理解し、故障状況や対応経過を記録しながら協議することが、紛争の予防と早期解決につながります。

沖縄県内で、賃貸物件の修繕費用や家賃減額をめぐるトラブルにお困りの場合は、スマートリーガル法律事務所までご相談ください。

賃貸借契約書の内容や具体的な故障状況を確認した上で、法律上の問題点や解決方法について検討いたします。

お悩みの内容に合わせて、弁護士が解決への道筋をご提案します。

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